八千代工業が、将来を見据え、新たな領域に経営資源を振り向ける必要があることから、今年度末をもって陸上競技部の活動を休止するとを発表しました。八千代工業は、クルマの機能部品(燃料タンク・サンルーフ)の開発・製造と樹脂製品・補修パーツ製造などを行っている会社です。製品別セグメントの合計金額は1,572億円です。そのうち燃料タンクは443億円で28パーセントです。
クルマ業界のトレンドは、電気自動車化です。ドイツとイギリスは、2030年までにガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止します。アメリカ・カリフォルニア州は2035年、フランスは2040年です。中国は、2035年までにハイブリッド車のみ許可する方針です。電気自動車とエンジン自動車を比較した場合、部品数はエンジン自動車約3万点から電気自動車約2万点に減少します。電気自動車は動力源がモーターであることから、八千代工業が製造している燃料タンクが不要になります。
八千代工業はホンダ系部品メーカーです。ホンダは、「中国電動化戦略発表会」を10月にオンラインで開催しました。その概要です。
・2030年以降、中国で新たに投入する四輪車はすべてハイブリッド車やEVなどの電動車とする
・広汽Hondaと東風Hondaそれぞれ新たなEV工場を建設。2024年の稼働開始を目指す
ホンダは電気自動車化に舵を切っており、八千代工業の燃料タンクの取引数量は減少していくでしょう。
陸上競技部の活動休止は残念ですが、クルマ業界の電気自動車化を見据えると懸命な判断だと言えそうです。
八千代工業と同様に自動車部品の製造を行っていて陸上部を運営している企業には、プレス工業、愛三工業があります。これらの企業がいつ陸上競技部の休止を判断してもおかしくないと思います。
また、エンジンがなくなる影響は大きく異業種からの参入障壁も大幅に下がるためトヨタやホンダなどの自動車メーカーもうかうかしてはいられないと思います。
プロ野球の親会社の御三家と言われたのは「新聞」「鉄道」「映画」でした。新聞は毎日とサンケイが撤退し読売新聞と中日新聞が残っています。鉄道は、東急、西鉄、南海、阪急、近鉄の5社が撤退し阪神、西武の2社だけになりました。映画に至っては、松竹、大映、東映の3社のどれも親会社として残っていません。駅伝チームの保有会社も同じで、時代と共に変化していくのだと思います。